新しい環境建築の計画を行うにあたって冷暖房最大負荷や結露の計算を行う時の気象条件の設定方法について紹介します。
このページでは、なじみがないかもしれない「EXCEL関数」をいくつか使いますが、使えるようになると様々な場面で使える便利なの関数です。専門の資料やWEBサイトで調べてみてください。
危険率を考慮した外気象(TAC)の計算
冷暖房最大負荷や結露の計算を行う時の外気象としては、夏は温度、湿度、日射量、冬は温度、湿度が主に必要です(温度、湿度から求まる比エンタルピーも)。風力換気や土壌熱容量を使う計画では、風速や土壌温度が必要になることもあります。
これら外気象には、過去10年間の統計値から求められた、市販される「拡張AMeDAS標準気象データ」を使うのが便利ですが、ちょっと高額なのため、気象庁地上観測値を用いたい時があります。
また、近年の急激な気象の温暖化を踏まえて過去10年間の統計値でなく、例えば直近3年間の気象庁観測値を検討に用いたい場合があると思います。
この観測値を用いる場合、対象期間の夏の最高値、冬の最低値を用いると経済設計ができないので、冷暖房期間のうち数%は超えること(危険率)を許容する「TAC(米国ASHRAEの起案)」と呼ばれる設計気象を計算、利用することがあります。
このTACは、10年以上前の過去に各機関から色々と計算された結果情報が見られますが、近年のデータで、任意の建設地点で求めたい時には、自力で求める必要があります。
これをエクセルでパっと求める方法を紹介したいと思います。
いわゆるヒストグラムを計算し描画する方法なので、目新しいものではないですが、検討経験のない方には参考になるかと思います。
なお、エクセルの標準アドイン「分析ツール」でも同じことができますが、次の方法を覚えてしまえばずっと融通性が高い便利な方法だと思います。
任意の毎時値の超過時間計算のための予備計算
まず、求めたいデータ(例えば外気温)の毎時値を用意します。気象庁のWEBサイトから全国約840地点のデータが取得できます。
毎時値の統計処理方法を下図に示します。
・年間データを対象とする場合は、検討したい期間(例えば、冷房期間:6~9月)に対応するセル範囲(配列)を求めるための、期間の始まりと終わりの行をセルF5、F6にて”Match”関数で計算します。
・セルF5では、A列の毎時の時刻データから、2023/6/1 0:00の行番号(3635行)を計算しています。同じくセルF6では、2023/10/1 0:00のA列の行番号(6563行)を計算しています。
・その他に、セルF7では”=F6-F5″で期間のデータ数を、セルF8では後に統計対象とするセル範囲(配列)の文字列を、セルF5とセルF6およびセルB1の値から設定します。
・セルB1の値は、統計対象とするデータ(ここでは外気温)の列のアルファベット名を関数で計算したものです。”Substitute”関数や”Address”関数は見慣れない関数かもしれませんが、別の場面でも色々と使えるのでぜひ調べてみてください。
・セルF8では、以降の統計で使うデータの範囲(セル範囲(配列))を、G8記載の文字列演算式で求めます。

本計算
予備計算で求めたセルF8のセル範囲(配列)に対して、”Countif”関数で任意の毎時値の超過時間を計算します。ここで、F8のセル範囲(配列)の書式は「文字列」です。これを”Countif”等の各種関数内で参照ができる”Indirect”関数を使います。
下左図では、E列の式を”=COUNTIF(INDIRECT($F$8),”<=”&D11)”とし、6/1の0:00から10/1の0:00の毎時外気温であるセル範囲”B3636:B6563”について、D列(セルD11)の温度15℃より低い時間数を計算しています。
下右図では、F列の式を”=E11/$F$7*100″とし、E列の時間数を全時間数で割り割合を計算しています。


D列の温度を例えば1℃ずつ増し、E、F列の式を下にコピーすると下左図のような表が作成でき、下右図のグラフ(ヒストグラム)が描けます。
すると、超過確率3%の外気温を求めたい時、下左図の累積頻度97%の値34℃であることが分かり、下右図のように可視化することができます。
なお同じ表計算は、配列関数である”Frequency”関数でよりスマートにできますが、配列関数に慣れるまでは上記の方法が順序だった理解しやすい方法なので良いと思います。


なお、任意の超過確率となる値(気温など)を直接的に求める関数は各種あります。下図の赤枠内に2つの方法を記しました。
方法1)百分位数を求める関数で計算:”Persentile.Inc”関数
方法2)上位何番目を求める関数で計算:”Large”関数
超過確率3%の時の外気温は、前者は33.9℃、後者は34.0℃で選ばれたデータが1つ分異なりましたが、上で一覧表で求めた結果と合っているのが分かります。

2025.7.14 – UPDATE;2025.8.5
